
Mechanical Sealsメカニカルシール
メカニカルシールとは?
メカニカルシールは、ポンプやコンプレッサーなどの回転機械の動力を伝える軸部分(シャフト)に設置されるパッキン部品の一種です。自動車、船舶、ロケット、産業プラント用設備から住宅用設備まで、様々な場面で使用されています。その役割は、機械で取り扱われる水や油などの流體が機械の外部(大気中?水中など)への漏れを防ぐことで、これにより、環境汚染の防止、機械の運転の効率化による省エネ、さらには機械の安全にも貢獻しています。
下記の図は、メカニカルシールの設置が必要とされる回転機械の斷面図です。メカニカルシールがある場合もしくはない場合を、ある大きな釜の中心に回転する軸入っている機械(ミキサーのようなもの)で説明しています。
メカニカルシールがある場合、ない場合
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シールが無い場合
- じゃじゃ漏れになりますね
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グランドパッキン(詰め物)の場合
- 軸が摩耗します
- 摩耗を防ぐ為に漏れ(潤滑)
必要とします
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メカニカルシールの場合
- 軸は摩耗しません
- 漏れはほとんどない
ここで我々メカニカルシール業界では液體の漏れを制限することを「シール」と表現します。
- シールがない場合
- もし、メカニカルシールもしくはグランドパッキン等がなければ、
軸と機械の隙間から流體は漏れてしまいます。 - グランドパッキン(詰め物)の場合
- 機械からの「漏れを防ぐ」という目的だけでしたら、軸の箇所にグランドパッキンというシール材、いわゆる「詰め物」を設置することでも対応できます。しかし、軸にグランドパッキンを締め付けることから、軸の動きを妨げる原因ともなりますし、軸も磨耗します。また、使用にあたり潤滑剤などが必要になります。
- メカニカルシールの場合
- 軸側、機械ハウジング側にそれぞれ分離した輪(「環」)を設置し、軸の回転動力を損なわず、機械で取り扱う液體等の漏れも殆ど発生しません。そのために、一つ一つの部品が緻密な設計に基づき作られており、機械での取り扱いが難しい危険な物質や高圧力、高回転といった過酷な條件でも漏れを防止することが可能です。
メカニカルシールはどのように使われるのか?
ポンプにおいてメカニカルシールが使用される例を紹介します。
ポンプの構造からみるメカニカルシール
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- ① ポンプの內部構造図
- ポンプは內部の液體等を汲みあげるなど流體を移動させる機能をもつ機械です。インペラ(翼)が回転することにより水を動かします。
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- ② ポンプのメカニカルシール設置箇所
- インペラ(翼)を回転させる軸にメカニカルシールが設置されます。これにより、ポンプ本體と軸の隙間から液體の漏れを防止しています。
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- ③ 軸におけるメカニカルシール設置箇所
- メカニカルシールは、主に軸に設置する「回転環」とポンプのハウジング箇所に設置する「固定環」の二つの環で構成されています。
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- ④ メカニカルシールの構造(固定環と回転環)
- 回転環は軸とともに回転し、固定環とミクロン単位の隙間を保持しながら摺り合います。摺り合う箇所を摺動面といいます。
漏れと摩擦のコントロールがポイント

「摺動面」は固定環?回転環が擦り合わさる面であり、流體を止める、もっとも重要な部位です。
隙間が狹すぎたら摩擦が強くなり、軸の動きを妨げたり、シールが壊れるといった影響を與えます。逆に隙間が大きすぎたら液體を漏らすことになります。
漏らさず、かつ、流體による潤滑を保つことにより、摺動トルクを低減し、機器の回転を阻害しないよう、ミクロン単位の隙間制御が必要となります。
メカニカルシールを支える技術
メカニカルシールの技術とは、これらの機能?用途から、機械工學、物性技術の集約したものでもあるといえ、固定側、回転側それぞれ二つのリングが擦り合う(摺動する)面のコントロール、つまりトライボロジ(摩擦?磨耗?潤滑)技術に集約されるといっても過言ではありません。
また、メカニカルシールの機能向上は、機械で取り扱う流體やガスが、外部へ流出することを防止するとともに、機械の運転の効率化にも同時に実現するため、省エネ、環境汚染防止にも貢獻しています。また、回転機械が取り扱う媒體によっては、機械から漏れることにより事故の発生など危険を伴う場合もあり、メカニカルシールには確かな技術力に支えられた高い信頼性が必要とされます。
メカニカルシールはこれらの機能役割から、將來的にもますます重要な機能部品として、更なる技術革新が期待されており、それらに応えるべく日々、技術研究開発に取り組んでいます。